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遺留分放棄申立が却下された判例紹介-3件まとめて紹介

○「遺留分放棄申立が全く自由意思か疑問として却下された判例紹介」の続きです。
遺留分放棄申立が許可された裁判例を探しているのですが、現時点では、「相続開始前遺留分放棄申立許可要件について-許可申立認容例紹介」で紹介した平成15年7月2日東京高裁決定(家庭裁判月報56巻2号136頁)で紹介した判例しか見つかっていません。

○以下、遺留分放棄申立却下の判例(審判)を3件まとめて紹介します。
先ず5年後に300万円の贈与を受ける契約のもとになされた遺留分放棄の許可申立を、将来右契約が履行されない虞れ等申立人に生ずるかもしれない損害を考慮して却下した昭和40年10月26日神戸家裁(家庭裁判月報18巻4号112頁)審判全文です。

主   文
本件申立はこれを却下する。

理   由
(1) 本件申立の要旨は「申立人は昭和24年6月23日A女とB男(本籍神戸市兵庫区○○町○丁目○番地、大正6年9月8日生)の間に出生し、昭和40年4月5日A男の認知をうけた者である。ところで、A男は妻C女との間に子がないところ、今般申立人に対し、昭和45年12月末日に金300万円を申立人に贈与するから、遺留分の放棄をされたい旨申し向けた。そこで、申立人としては、遺留分の放棄を決意し、その許可を求めるべく、本件申立に及んだものである」というのである。

(2) そこで考えてみるに、本件調査の結果(申立人審問の結果を含む)によると、申立人主張の上記事実は、すべてこれを認めることができる。しかしながら、申立人が父B男から既に金300万円の贈与をうけ了つているというのであれば兎も角、本件においては、唯単に5年後に金300万円を贈与するという契約がなされているに過ぎないのであつて、それが果して現実に履行されるか否かについては、現在のところ、たやすく予断を許さないのであるから、このような事情の下で遺留分の放棄を許可するときは,他日申立人にとつて、予想外の事態を招き、思わぬ損害を惹起する虞れがないとはいえない。そうすると本件遺留分放棄は相当でないから、それを許可することはできないという外はない。
よつて、本件申立はこれを却下し、主文のとおり審判する。(家事審判官 坂上弘)


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次に妻の夫に対する遺留分放棄の許可の申立を認めなかつた昭和35年10月4日東京家裁審判(家庭裁判月報13巻1号149頁)全文です。

主   文
本件申立を却下する。

理   由
 申立人は被相続人夫に対する遺留分の放棄許可を求めるというのであつて,その理由とするところは、申立人は現在息子たちの扶養をうけており、今後の生活に不安がないから被相続人夫に対する遺留分放棄の許可を求めるというのであるが、申立人の申立は被相続人の発意に出たものであり、殊に配偶者相続権の確立並びに諸子均分相続の理念に反するところがあるので、主文の通り審判する。 
(家事審判官 村崎満)


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申立人の両親は、かねてから申立人が現在の妻との結婚に反対し、財産を申立人に与えることはできない旨主張しており、申立人と両親に第三者をまじえて申立人の結婚問題を話し合つた際申立人は結婚を翻意しなかつたところ両親は用意していた遺留分放棄申立書をとり出し申立人に署名捺印させたことなど判示事情のもとにおいては申立人が本件申立をするに至つた理由は両親からの結婚問題に関するかなり強度の干渉の結果といわざるをえないから、本件申立は憲法24条1項の趣旨に照らしこれを許可するに足る合理的理由があると認められないとした昭和46年7月31日大阪家裁審判(家裁月報24巻11号68頁)全文です。

主   文
本件申立はこれを却下する。

理   由
本件調査の結果によると次の事実が認められる。
一 申立人は昭和17年12月4日A・B夫婦の長男として出生し、現在○○株式会社の社員として勤務しているものであるが、昭和45年3月頃両親に対し申立外Cと結婚したい旨申出たところ、両親は、Cには実父母も生存しており、同女の養父母には他に子がない点から考えて、同女を長男である申立人の嫁に迎えたのでは、将来自分達夫婦の面倒を充分みてもらえぬであろうし、又同女の性格の強さから考えて申立人には不似合だと判断し、若し申立人がCと結婚するのなら、自分らの財産を申立人に与えることはできない旨主張してこれに反対したので、申立人はCと結婚する為には、それも止むを得ない旨答えていた。

二 そして申立人の両親が、昭和45年7月27日を申立人と自分達のすすめる女性との見合い日と定めたところ、申立人はこれを嫌つて、同月18日両親の許を家出し、両親には内密に同月26日をCとの挙式の日と定め、右結婚式の式場の予約までした。ところが、事前に両親が申立人の勤務先を訪れて右事実を知つて憤慨し、直ちに申立人の了承を得ずに前記式場の予約を取り消した為、当日申立人らが結婚することは出来なかつた。

三 その後申立人、同人の両親並びに上司らが、昭和45年8月3日勤務先近くの料亭で、申立人の結婚問題につき話しあつたが、申立人が翻意しないのを見た両親は、その場で、かねて用意して来ていた本件遺留分放棄申立書の記載事項中、申立人の署名捺印欄、申立人欄を除くその他の各所定欄には既に自分達で記入済みの家事審判(調停)申立書二通(当家庭裁判所受理番号第5885号、同5886号)をとり出し、申立人に対しかねての約束通り、申立人がCと結婚するなら自分らの財産を与えられないから、これら遺留分放棄申立書に署名捺印するよう申し向け、申立人もこれを了承して各申立書に自署、捺印し、翌4日同申立書が当裁判所に提出されたものであり、その後同月11日申立人はCと結婚した。

 以上の事実が認められる。そしてその事実から判断すると、申立人は審判期日に任意に出頭し且つ平静に遺留分を放棄する旨申述べているものの、申立人と同人の両親の間では約6ケ月間に亘りCとの結婚問題に関しかなり激しいやりとりや干渉が繰りかえされて来た事情がうかがわれ、又、他に申立人が本件申立をなすに至つた動機も見当らない点から考えると申立人が本件申立をなすに至つた理由は、やはりかかる両親からの自己の結婚問題に関するかなり強度の干渉の結果と言わざるを得ない。そうすると、本件申立は憲法第24条第1項の趣旨に照らしこれを許可するに足りる合理的な理由があると認められない。

 よつて本件申立はこれを却下することとし、主文のとおり審判する。(朝田孝)

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