小松法律事務所

相続財産管理人実務-共有者の一人が相続人なくして死亡したとき3


○「相続財産管理人実務-共有者の一人が相続人なくして死亡したとき2」の続きです。民法第255条の「共有者の一人が、(中略)死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」についての相続財産管理人実務の問題です。

○共有物件について、死亡して相続人がいないときに、その共有持分が、他の共有者に帰属するのは、平成元年11月24日最高裁判決によって、相続人なくして死亡した者の共有持分が他の共有者に帰属する時期は、相続人の不存在が確定し、相続債権者や受遺者に対する清算手続が終了した後、なお当該持分が承継すべき者のないまま残存することが確定し、さらに同法958条の3による特別縁故者への財産分与の制度が設けられた結果、相続人なくして死亡した者の相続財産の国庫帰属の時期が特別縁故者に対する財産分与手続の終了後とされました。

○「相続財産管理人の実務基礎の基礎」記載の通り、
①相続財産管理人が就任すると就任の公告がなされ(民法第958条2項)、
②相続財産管理人は、公告後2ヶ月以内に相続人のあることが明らかにならなかった時は、相続債権者及び受遺者に対し2ヶ月以上の期間を定めて請求の申出をすべき公告をし(民法第957条)、
③その期間に申出がないときは、家庭裁判所が6ヶ月以上の期間を定めて相続人があるならばその期間内に権利を主張すべき旨を公告し(民法第958条)、その期間経過で相続人不存在が確定し(民法第958条の2)、
④③の期間経過後3ヶ月以内に特別縁故者の請求があれば清算後残存する相続財産の全部又は一部を与える(民法第958条の3)
これらの手続が全て終了してようやく、共有財産に対する持分は、他の共有者に帰属します。

○上記の通り、就任公告2ヶ月、相続債権者・受遺者公告2ヶ月以上、相続人捜索公告6ヶ月以上、特別縁故者請求期間3ヶ月の合計13ヶ月以上経過して、全てなしで終わったときに、相続人がいない死亡者の共有持分が他の共有者に移転します。共有物件は不動産だけでなく、動産も同様です。民法第264条により所有権以外の財産権についても、法令に特別の定めがない限り、民法第255条は準用されます。実際は法律上特別の定めがある場合が多く、準用される例はそれほど多くないと解説されています。

○民法第255条の立法趣旨は、所有権と言う本来の強力な権利が、共有になると、共有者の存在で一部制約を受けているだけなので、共有者が放棄や死亡で存在しなくなれば、その共有者の存在しなくなった部分は他の共有者に帰属させるとの、「所有権(共有権)の弾力性」を宣言したものだと解説されています。だとすると、不動産・動産の他の預貯金等債権も、同様に、相続人なくして死亡し、相続債権者・受遺者・特別縁故者等がなく、残った場合は、他の相続人との遺産に属する預貯金の場合、他の相続人に帰属すると考えて宜しいでしょう。但し、この点を明言した解説書は見つかっていません。