小松法律事務所

親子関係不存在確認の訴えの確認の利益を認めた最高裁判決紹介


○亡C・D夫婦の孫のXが検察官に対し、戸籍上亡C・D夫婦の子とされている亡Eと亡C・D夫婦との親子関係の不存在確認を求める訴えを提起したところ、原審の高裁では、X(上告人)が、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しないと判断して却下しました。

○しかし、上告人Xは、亡C・亡D夫婦の孫であり、戸籍上は亡Eの戸籍上の甥で、亡Bの法定相続人であるところ、亡C・D夫婦と亡Eの親子関係が不存在であるとすれば、亡Bの相続において、亡Eの子らは法定相続人とならないことになり、その存否により上告人Xの法定相続分に差異が生ずることになります。そこで上告人Xは、その法定相続分に差異が生ずることにより、亡C・D夫婦と亡Eの親子関係は、Xの身分関係に関する地位に直接影響を受けるので訴えの利益があるとした令和4年6月24日最高裁判決(判タ1504号39頁、判時2547号○頁)全文を紹介します。

○親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要するされています(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁)。原審では、本件各親子関係の不存在が確認されても、財産関係に影響はあっても、身分法上の地位に直接影響を受けることはないとしてこれを否定していました。

亡C___亡D
   |
亡A 亡B 亡E
 |     |
 X   子3名

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主   文
原判決を破棄し、第1審判決を取り消す。
本件を鹿児島家庭裁判所に差し戻す。

理   由
 上告代理人○○○○の上告受理申立て理由について
1 原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)亡A及び亡Bは、亡Cと亡Dとの間の子であり、亡Eは、戸籍上亡Cと亡Dとの間の子とされている者である。 
(2)亡Aは昭和25年に、亡Eは平成14年に、亡Bは平成29年に、それぞれ死亡した。亡Bの戸籍上の法定相続人は、亡Aの子である上告人外1名及び亡Eの子ら3名である。

2 本件は、上告人が、検察官に対し、亡Eと亡C及び亡Dとの間の各親子関係(以下「本件各親子関係」という。)の不存在の確認を求める事案である。

3 原審は、上記事実関係等の下において、上告人は、本件各親子関係が不存在であることにより自己の身分法上の地位に直接影響を受けることはないから、本件訴えにつき法律上の利益を有しないと判断して、これを却下すべきものとした。

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 前記事実関係等によれば、上告人は、亡C及び亡Dの孫であり、亡Eの戸籍上の甥であって、亡Bの法定相続人であるところ、本件各親子関係が不存在であるとすれば、亡Bの相続において、亡Eの子らは法定相続人とならないことになり、本件各親子関係の存否により上告人の法定相続分に差異が生ずることになる。親子関係の不存在の確認の訴えを提起する者が当該訴えにつき法律上の利益を有するというためには、当該親子関係が不存在であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることを要すると解されるところ(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)、法定相続人たる地位は身分関係に関するものであって、上告人は、その法定相続分に上記の差異が生ずることにより、自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けるということができる。
 以上によれば、上告人は、本件訴えにつき法律上の利益を有するというべきである。


5 これと異なる見解の下に、本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、第1審判決を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を第1審に差し戻すべきである。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡村和美 裁判官 菅野博之 裁判官 三浦守 裁判官 草野耕一)