小松法律事務所

相続財産管理人と相続財産清算人覚書-両者の違い


○「相続財産管理人の実務基礎の基礎」、「相続財産管理人実務-共有者の一人が相続人なくして死亡したとき」、「相続財産管理人実務-共有者の一人が相続人なくして死亡したとき3」等で、民法第951条(相続財産法人の成立)「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。」から第959条(残余財産の国庫への帰属)「前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。」を説明してきました。

○この説明当時「相続財産管理人」と表現していた用語は、令和3年改正令和5年4月施行相続法によって「相続財産清算人」と変更されました。以下の条文です。
第952条(相続財産の清算人の選任)
 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、6箇月を下ることができない。

この改正では同時に
第897条の2(相続財産の保存)
 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第952条第1項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第27条から第29条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

との条文が追加されて、この規定で「相続財産管理人」と表現される制度ができました。

○この相続財産清算人と新相続財産管理人の違いですが、相続財産清算人は、相続人のあることが明らかでないときに選任され、相続財産の管理・処分を行い、債権者・受遺者への弁済、特別縁故者への財産分与、残余財産の国庫帰属という手続きを行う役割と権限を有し、新相続財産管理人は、必要なときにいつでも選任でき、その権限は原則として相続財産の管理(保存行為)のみで、家庭裁判所の許可がなければ相続財産を処分する権限や役割はないとされています。

○改正相続法施行の令和5年4月より前の記事で、相続財産管理人と表現していた記事は、改正相続法施行後相続財産清算人と読み替える必要があります。「相続財産管理人実務-共有者の一人が相続人なくして死亡したとき3」に記載した共有者の一人が相続人がいないため相続財産清算人を選任して手続終了後の財産の帰属について別コンテンツで説明を補充します。